魚文をさがして

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故・金城次郎氏は日本を代表する陶芸家にして、沖縄県初の人間国宝(重要無形文化財琉球陶器技能保持者)に認定された人物。金城氏は長く県内の陶芸の第一人者として活躍し、読谷村に招かれて移住したあと、読谷壺屋焼・金城次郎窯を構えた。金城氏の有名な作品といえば、複数の曲線や渦巻き模様を組み合わせてつるが絡み合う様子を表した唐草模様や、魚を描いた魚文があげられる。

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「魚文線彫り」と呼ばれる魚が泳ぐ様を描いた模様は沖縄に伝わる定番の柄で、子孫繁栄を意味するめでたい柄だ。金城氏の子や孫、親族、弟子たちもまた、それぞれが独自の魚文を描いている。「ヤチムンの里」には「次郎窯」を中心に、金城次郎一門の窯元が点在する。そこで作られるマカイ(茶碗)や湯呑み、コーヒーカップ、抱瓶、さまざまな形の皿や小鉢、あらゆるヤチムンの中に魚が泳ぐ。吉祥を祝う鮮やかな赤色の中に泳ぐもの、口を少し開けたもの、元気よく体を跳ねさせるもの。金城氏譲りでありながら、線彫りの太さ、鋭さ、角度、魚1匹1 匹のフォルムや表情、うろこの描き方、色の塗り方、それぞれが異なり、作家独自の個性が色濃く出ている。笑っていたり、鋭く引き締まった表情だったり、うろこにハートマークが入っていたり、色や模様も十人十色で、ひとつずつ違いを確かめていくのが楽しい。どれも眺めるだけで眼福もの。独特の力強いモチーフからはきっと元気を貰えるはずだ。

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