古陶をおいかけて

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沖縄では、壺屋焼以前にも喜名焼・湧田焼といった焼き物が作られてきた。時代によって形や風合いが異なっており、歴史的背景を頭に入れて眺めてみるとまた奥深い。中でも、琉球王朝時代の16 世紀から19 世紀前半に作られた作品は、陶工が王府に焼き物を献上していた時代でもあり、優美で繊細な作品が多いという。

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京都出身の壹岐幸二さんは、その頃に作られたうつわに心を奪われ、陶芸の道を志した。「出会ったのは沖縄県立芸術大学にいた20 歳の頃。大嶺實清先生の授業で博物館に収蔵されていた作品を見せてもらったのが最初です。色や形の美しさに感動して一目で好きになりました。日本にはないエキゾチックな雰囲気を感じたのを覚えています」。民藝運動の中心人物・濱田庄司氏からも「卵の殻のような美しさ」と評価された白生地に惹かれ、卒業制作では、当時の白化粧土を再現するための研究に没頭したという。その研究には一年を費やした。「明治政府の廃藩置県により琉球処分を受け、沖縄だけに築かれてきた文化の方向性が変わってしまったように思える。当時の、アジアを感じさせる作品を作っていた頃を見つめ直したい」。壹岐さんのギャラリーには、資料を頼りに再現した抱瓶やマカイ(茶碗)、チューカー(急須)が並んでいた。その美しくシャープなフォルムの作品には、不思議と最先端のデザインを思わせるような、どこかモダンな香りが漂っていた。このうつわが、200 年も前に沖縄で作られたことに驚くと同時に、誇らしさを感じた。壹岐さんは当時の陶工と語り合うように、色や形だけではなく、作る上での心まで探ろうとしている。

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